チョココロネ
「虫歯になるから」という理由で、普段はジュースもお菓子も禁止されていた子供時代
父方の祖母と同居していたからか、食卓にお惣菜や冷凍食品が並ぶ事は絶対になかったのだけれど、朝だけはパン屋さんで買ってきたパンが並んでいる事も
だけどやっぱりクリームパンとかそういった、菓子パン系は皆無、サンドイッチとかロールパンを焼いたものとかばかり
母は料理が不得意なので正直、毎日の食卓が苦痛だった私、食べなければ怒られて、だけど怒られた所でどのみち食べられないのでダラダラと苦痛な時間が長引くだけ
そういう食生活だったので食べる楽しみなんて物は実感した事がなくて、好きな食べ物と言えば、チョコレートのみ
そんなある日、お友達のおうちに遊びに行った時の事
校区ぎりぎりだった私のおうち、そのお友達とはおうちが近いものの小学校は別々、幼稚園で知り合ったお友達で、遊ぶ事なんて滅多になかったのだけれど
その子のおうちは私の母が利用するパン屋さんのすぐ近くで、私が訪ねて行った時はちょうどおやつを食べていて
そのおやつというのが、そのパン屋さんで買ったという、チョココロネ
初めて見るそのパンに私はびっくり、お菓子系のパンがある事自体知らなくて、パンが甘いだなんてと、少し信じられなくて
私の分も買っておいてくれたその子のお母さん、そのパンを貰って食べたのだけれど、すごく美味しい
それ以来、高校生になって自由に好きな物を買って食べていい様になるまで、チョココロネにずっと憧れて過ごした私
だけど、その頃にはもうそのパン屋さんは閉店してしまって、結局あのお店のチョココロネは二度と食べられませんでした
大人になった今、どのチョココロネを食べてもあの時ほど美味しいと思えない、だけど、見つけたらついつい買ってしまうこのパン、結局美味しいとも思えず、食べきれず残してしまうのだけど
今食べたらやっぱりそれほど美味しくないのかな、それでももう一度、あのパン屋さんのチョココロネを食べてみたい